10年分の感謝を
ラジオの周波数を合わせれば、いつも変わらない声でわたしの夜を救ってくれたのはSCHOOL OF LOCK!!(通称SOL)というラジオ番組だった。
平日の夜22時から23時59分まで、歪んだギターで奏でられるチャイムの音と共に、”未来の鍵を握るラジオの中の学校”が開講される。
"未来の鍵(LOCK)"はなんでもいい。
いつかそれを見つけることがこの番組がある理由だという。
ラジオ番組を学校に見立てて、放送は"授業"であり、パーソナリティは"校長"、"教頭"という愛称で、ゲストは"先生"
そしてリスナーは"生徒"と呼ばれるユニークなスタイル。
2020年3月をもって、10年聴き続けてきたこの番組がリニューアルされるため、こうやって超個人的な思いの丈を綴ることにした。
過去にしっかり向き合いたい気持ちと、並々ならぬ思い入れの強さのあまり、この記事を書くことにもかなりのエネルギーと期間を要した。(にしても要しすぎた)
スマホや携帯電話が今のように発達していなかったわたしの学生時代は、ラジオから流れてくるものが世界のすべてだった。
親に寝なさいと言われないように、布団の中でボリュームを最小にして聴いていた、ラジオ。ちょっと背伸びしていたような感覚も覚えている。
大きな地震があった日、台風の日、大事な試験の前日、大学入試の合格発表の日、失恋した日、一人暮らしを始めた日、悲しくて悔しくてたまらなかった日。
どれだけ心細い夜も、会ったこともないけれど、声で繋がってる校長や各時代の教頭の声、そして流れてくる音楽を聴けば無性にほっとした。
いつ聴いても同じ声で話してくれている安心感とあたたかくて押し付けがましくない、代えのきかない媒体。
そんなSOLには、とーやま校長という校長がいた。
お笑いが趣味で、(という設定。お笑い芸人の某トリオの方)わたしが聴き始めた時代のSOLはこのとーやま校長が2代目校長を務めていた。
今回のリニューアルとは、とーやま校長が10年務めた校長を退任するに伴って、番組が少し変わるというもの。
SOLを初めて聴いたのは、2010年11月1日で、当時警備員(という設定)だったflumpool目当てだった。
その日は、学校がつらいという生徒の悩みを聞いたとーやま校長が、ゲストの阿部真央さんの曲を聴いていろんな思いが溢れてぼろぼろ泣いていて、当時どんなラジオなんだよってびっくりした記憶がある。
学生時代って、正しいことだと分かっても、大人が言うことを信じられなかったり、受け入れたくなかったり独特のどこにもぶつけられない感情があると思う。
そんなときでも、ラジオから流れてくることは素直にそうだなぁって思えたし、同じ目線で心の芯のほうに寄り添ってくれる力があるんだと感じさせられた。
毎日いろんなテーマの授業が行われ、アーティストがゲストで来るときもあれば、生徒に逆電することもあり、時には繊細で難しいことも、全国にいる生徒と一緒に考えたり、分かち合ったり、かけがえのない大事な時間を過ごした。
そして、ラジオの中でその日にかかる曲たちは、生徒との電話での内容や毎日必ず授業の最後に書かれる黒板のメッセージを汲み取った秀逸な選曲でYouTubeやサブスクが発展していなかったあの頃、好きになる音楽をキャッチするきっかけだった。
くるり、毛皮のマリーズ、清竜人、Galileo Galilei、音速ライン、LOST IN TIME、竹原ピストル、などここに書ききれないくらい、聞くだけで青春のような時間が蘇る強烈な記憶として脳裏に焼き付いてる。
そんなどっぷり浸かった10年を経て、そりゃ聴かなくなった時期だってあったけれど、確かにそこに"いてくれる"ことがどれだけ支えになっていたか。
とーやま校長がいなくなるって知ってから初めて、今までの、この当たり前になっていた時間がどれだけ大事だったかと気づいた。
10年間という長い間、そして10代という多感な時期にずっとそばにいてくれたもの。
寂しい夜も、なんとなく心がしんどい夜もどんな時だって、ラジオをつければ聞こえてくる声。変わらない温もり。
思ってる以上にわたしの心の拠り所であり、いつでも支えられていた。
ラジオなのに喋れなくなるくらい生徒の話に泣いたりするとーやま校長が好きだった。
誰よりも人間らしくて大人なのにわたしたちに近い。
そんな校長が大好きだった。
だから、10年分の感謝を。
2020年3月31日、とーやま校長の最終日のラジオは笑いながら泣きながらの校長に涙が止まらなくて、信じられないほどわたしも泣いた。
俺の10年は君の10年だ、と言ってくれた。
ありがとう、とーやま校長。
リニューアルしても、たくさんの生徒が救われるんじゃないかな。
最後に、SOLの中で、とーやま校長へ手紙を書く企画があったので、ありったけの感謝を手紙にしたためて送ったら、とーやま校長が返事を書いて返してくれた。
わたしの今までの人生まるっと救われた気がした。
毎日一生懸命生きることが、校長への最大の恩返しだと思うから、もらった熱い言葉たちを抱きしめてこれからも頑張っていこう。
わたしはSCHOOL OF LOCK!!が大好きです。